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九十九会の基本理念 
私達のめざすもの(2007)  

 い人間の歴史の中で、人間の価値観はいろいろに変わってきた。そしてその価値観が、またいろいろな差別と格差を生んできた。
 つの時代でもその時々の社会背景の下、社会的、経済的差別による自由の抑圧が行われてきていた。そうした身分制度や貧困の中で生じた自由への抑圧は、時に異常なまでに高まり、そして抑圧に対する抵抗も必然的に高まりを見せたのである。それは、差別克服のための戦いであったといえる。こうした歴史のくりかえされる中で、人間の価値は、身分や貧富、ましてや背の高低、体重の軽重、男女の性差、肌の色、肢体容ぼうなどによって人の価値が定まるものでないということが、問い直されてきたはずである。その結果少なくとも理念としては理解されるようになってきたといえる。それは、1975年の国連総会で決議された「障害者の権利宣言」に見られるように国際社会の合意となっている。当然のことではあるが、時間のかかることであった。しかしながら、果たして現実の社会は理念どおりの社会となりえているのかといえば大いに疑問である。
 た、人間の歴史は文明や文化を創造してきた歴史でもある。それはより豊かな暮らしへの願望と生存のためのものであった。その必然的な努力の中で次々と新しい文明と文化は育っていった。新しい文化の創造の基盤をなすものが、人の知恵であるとすれば、人間の文化や文明の創造の根源は、人の知恵であるということになろう。その結果、人間の知能の良し悪しこそが、文化、文明の創造にどれだけ貢献したかという新しい評価基準が生むことにつながってきた。その結果、人間の価値基準をその人間の知能の良し悪しに求めるという新たな差別が生じてきたのである。そのことは現在のように、高度に発達した資本主義社会の中では、社会への貢献度に置き換えられ、すなわち、生産に役立つか否かに置き換えられていることは、今日の社会がはっきりとその証をたてている。
 のような基準によって人間としての価値を認めるのならば、障害者、とりわけ、重度の障害は、その生存も否定されることになるのであり、いわゆる障害者は社会のお荷物=「ごくつぶし」呼ばわりする見方は永遠に消えることはあるまい。そしてその「ごくつぶし」観は、文化、文明が高度化すればするほど、拡大されていく危険性が大きいことは否めない。それは、人間が人間の価値を自らの手で、ふみにじることに通じる。すなわち人間を知的能力や身体能力といった限られた一面でのみ評価し人間の価値を図るといった愚行は、必然的に差別と格差を生むものとして断罪されなければならない。
 達は断じて、こうした人間観を認めることはできないと考える。ましてやそうした価値観に基づいた社会のありようや施策を断固として許さず、改善に向けての実践を行うものである。私たちが目指すものは、人間が一個の人間として尊重され、人間らしく生きられる社会。すべての人間が、生命の諸機能を存分に発揮し侵されない個性と独自性を実現していける社会。すなわち、「誰もが、一人の人間として尊重され、人間らしく生きられる社会」を作ることを目指すことであろう。
 念ながら、現在の社会は合意された理念とは程遠い現実があるといわざるを得ない。それは、国際社会においてもまだまだ武力による紛争は絶えず、多くの人の命が奪われている現実、日本においても「障害者自立支援法」の成立に代表されるように障害者施策は大きく後退している状況を見れば明らかである。人間の新しい価値観に基づく社会の成立は、今後の歴史の定めるところであろうが、私達は今、福祉を必要としている人々とともに、実践を通じて、こうした問題への問いかけと、生存の権利を取り戻す最後の砦としてあるという自覚と認識に立って、共感と感動のある、人間社会の実現に立ち向かわなければならない。

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